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このところ、近況報告をさぼってきたので、今回はその幾つかを書いておきたい。特に書きたいのは、様々な人との会食である。最近は歳を考えて、夜より昼の会食が多くなったが、機会もそう度々ではなくなったので、その一つ一つが心に残るものになって来た気がする。会食そのものが貴重な機会でもあるため、若い時のように酒の勢いに任せた会話や、仕事の延長線上のありきたりな会話ではなく、前もって会話の題材を思い浮かべながら参加したりもする。あるいは歳を重ねて来たためか、以前に比べ密度の濃い会話を心がけるようにもなった。
会食での会話は、もちろんそのメンバーの構成による。年配同士の会食では、それぞれが人生の残り時間に対してどのような感覚を持っているのかを確かめる感じもある。そうすると、何気ない会話でもそれが言葉以上の味わいを持ってくる。また若い人たちとの会食では、自分が歩んできた当時の感覚を思い出したりもする。老境に入った近年は、そうした言葉のキャッチボールが大切なものに思えて来て、相手の心に届く会話が出来れば嬉しいし、「楽しかった」と言われれば、しばらくその余韻に浸ることも出来る。そんな会食を幾つか拾ってみたい。
◆きょうだい4人の墓参を兼ねた会食
某日。お彼岸を前に、私たちきょうだい4人とその連れ合い2人とが、水戸の菩提寺に集まった。墓前で、皆で「般若心経」を唱えた後、いつものようにホテルの中華の個室で会食した。長姉は来月86歳、下の姉は83歳、私が来月81歳、弟が78歳なのだが、驚嘆したのは皆が歳とは思えないほど元気なことだった。長姉は、おととし連れ合いを亡くしたが、背筋もしゃんとして、最近も試験に一発合格、免許を更新したそうだ。長年合唱団に入っていて、今年2月にもトリニティーホールで合唱の発表会に参加した。会話も小気味いいほど歯切れがいい。
下の姉も元気一杯。子供の頃からマリンバをやっていて、今も部屋を占領するような大きなマリンバで難曲(バッハのシャコンヌ)に挑戦している。1日に何時間もやっていると、この季節でも汗が流れて来るらしい。毎日何キロもジョギングしている弟も超元気で、夏には山伏の山岳信仰の霊地を巡って滝行などにも挑んでいる。独特の食生活を送っていて「歳はとっても老化はしない」などと、妙なことを言っている。来年は亡母の13回忌がある。それまでまた頑張ろうと言い合いながら、皆、前向きに充実した老後を送っているのが心強かった。
◆「ご近所さんのランチ会」を計画
昨年末にふと、この一角に住んでいる6人の男性が集まって会食するのはどうだろうと思いついた。30年前に移り住んだミニ開発のこの一角は8軒あるが、施設に入っていたりして、今住んでいる男性は(50代の1人と同世代の5人)になる。女性陣は移住後から時折、昼食会を開いてきたが、男性の方はそれぞれに仕事もあってそれが出来なかった。顔を見て挨拶する程度が長く続いたが、仕事を卒業したりして時間が出来たので、一度会食の機会を設けたらと思いついた。防犯や防災、あるいは住宅のことなど、共通の話題も多いに違いない。
皆、とても感じのいい人ばかりなのが心強いことでもあったが、問題は、どう呼びかけをしたらいいかと言うことである。余計なお世話と思われてもいけないので、普段良く顔を合わせる何人かに相談してみた。感触がよかったので、呼び掛け文を作って回覧板を回し、都合のいい日を決めた。店も難問だった。あれこれ当たって最終的にカミさんと下見し、近くのイタリアンにした。店内の一角に仕切りがあって個室風にもなる。当日は雨模様だったが、隣のKさんが車を出してくれた。初めての試みだったが、これが予想以上に盛り上がった。
◆様々な話題で盛り上がる
話題は、最近リフォームした家の柱がシロアリにやられてびっくりしたこと。災害時の避難場所のこと。水害のハザードマップのこと。市の防災アプリのこと。エアコンなど家電の更新について。近所の寺社とのお付き合い。お互いの出身地について、などなどだったが、最初の盛り上がりは、先日の「事件」についてだった。それは、一部の人しか気が付かなかった事件だったが、つい先日、この一角で警察の張り込みがあったことである。朝、気が付くと家の近くに黒い服を着てスマホをずっと見ている人がいた。しばらくすると、別の人と交代する。
気になって、道路を掃除するふりをして近づき、目が合ったので「何かあったのですか」と聞くと、警察手帳を見せて「凶悪事件ではないけど、ヤツがここを通るかも知れないので」と言う。いわゆる張り込みである。近所のコンビニに行ったついでに観察すると、少し離れた道路わきにミニバンも止まっている。それが、1時間もしたらミニバンから7、8人もぞろぞろ出てきて、犬を連れた人を取り囲みながら、少し離れたアパートに入って行った。私以外にも警察手帳を見せられたご近所さんがいたが、結局「あれは何だったのかねぇ」という話になった。
◆互いの距離がグンと縮まる
その翌日、たまたま里帰りしていた娘が、囲まれていた当人が犬を散歩させていたのを見かけたと言うので、余計に不思議な事件だった。皆であれこれ推察しながら、コーヒーからデザートまで、あっという間に2時間が過ぎた。「楽しかったので、またやりましょう」と礼も言われて、やって良かったと思った。その後、シロアリの被害が出た個所を見せて貰ったりして、お互いの距離も一気に近づいた気がする。次回をいつにしたらいいのか。私が最年長なので、また相談しましょうと答えたが、5月には隣の御主人とゴルフなので、感触を確かめてみたい。
この他にも、幾つかの「心に残る会食」があった。定年後、(7年ほど)通った組織の若い元同僚がゴルフに誘ってくれ、朝が早かったので隣接のホテルに前泊。4人で火鍋料理を囲んで歓談した。日本の科学技術を支援している団体なので、最近の科学技術の動向やAIのこと、トランプ政策の影響などについて話をした。若い人たちが誘ってくれたことに感謝しつつ、ゴルフも含めて楽しい機会だった。あるいは、いつもリモートで雑談している元同僚とのリアル会。こちらも、話題は政治から老後の趣味まで多岐にわたって、時間を忘れる会食だった。
◆様々な会食に感謝しつつ
某日。AIの最新情報や仏教について深い知識を有しているIさんに声をかけて赤坂で会食した。NHKの後輩のIさんとのお付き合いは、考えてみれば最近のことである。以前から知ってはいたが、お付き合いが始まったのは、2年前に私が赤坂のテレビ番組制作会社に、AIのアドバイザーをお願いしてから。彼のAIの深い知識に驚嘆しつつ、さらにお付き合いを続けると並々ならぬ仏教の知識を備えていることも知った。会食では、近々ブログに書こうと思っている「AIの社会実装の課題」についてや、真言密教の「護身法」についても教えて貰った。
某日。3年前にOB会でお会いして以来、連絡が途絶えていたI先輩(95歳)から連絡があった。その後のやり取りで、今は施設に入っているとのこと。杖を使えば電車にも乗れるとのことで、「一度、Kさん(89歳)を入れて3人で食事しよう」と言われる。以前にも何度か先輩を囲んで会食してきた関係である。しかし、その状態が良く分からない。聞けば奥さんも施設に入っているとのこと。Kさんに言うと、ではIさんの近くで会おうということになった。その話を、定期的に連絡を取っている99歳の大先輩にしたら、自分もIさんに会いたいと言う。
99歳の大先輩は驚異的にお元気で、都内でも地方でも、一人でどこにでも出かけている。さて、どうしたものか。まずIさんの施設の近くで、3人で会食してから、その様子を見て、99歳の大先輩に声をかけようかなどと思案している。いずれにしても、この歳になるとそれぞれの会食が、一期一会のような貴重なものとなる。そのためにも、慎重を期さねばならないと思ったりする昨今である。
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